遊びのつもりが、ガチかくれんぼに

末っ子がまだ、よちよち歩きの
かなり幼い時のこと。


父が仕事で、家を留守にしている間に、
ふたりの兄が、末っ子と遊んでいたそう。


末っ子がさびしくないように、3人で、
かくれんぼをしようとなったらしい。


末っ子は、
体の成長は遅かったようだけれど、


みんなが言っていることの理解は、
早かったみたいで、


ふたりの兄のルールの説明を聞いて、
末っ子は、すぐうなずいていたそう。


はじめは、やさしいふわふわの中で
かくれんぼをしていたらしいけれど。


末っ子が、ふたりの兄を見つけるのが
異常に早かったらしい。


もちろん、末っ子が
すぐ見つけられるように、


やさしいところに
隠れていたのもあったのだけれど、


それにしても早いなぁ、と。


妙におかしいとなってしまっている
ふたりの兄は、だんだん
隠れるところのレベルをあげていたそう。


それなのに、ふたりの兄は、
末っ子に、すぐに見つけられてしまう。


じゃ、末っ子に隠れてもらって
私たちが末っ子を探してみる?


と、ふたりの兄は、なったみたい。


けれど、これが大騒ぎになったらしくて、
ふたりの兄が、いくら探しても、
末っ子が、見つからなかったらしい。


家だし、見つからないはずがないのに、
まったく気配がないんだそう。


どうしよう、どうしようと。
日は暮れているのに、末っ子が見つからないと。


焦りに焦ってしまっている
ふたりの兄は、もう泣きそうになる。


父が仕事に帰ってきて、
ふたりの兄は、父に泣きついて、


かくれんぼをしていたけれど、
末っ子が見つからないと、ふたりの兄は、
慌てる声で、父に飛びかかっていたそう。


でも、父は、すぐわかったように、
静かに歩いて、末っ子を、見つける。


末っ子は、ふたりの兄が、
あんまりにも遅いから、眠ってしまったらしい。


父はやさしい顔で、眠っている末っ子を
起こさないよう、そっと抱きしめてあげる。


末っ子が隠れていたところは、
ふたりの兄も、よく知っているところ。

それなのに、末っ子が見つけられず。


ふたりの兄は、勘が鋭い。
探せないはずがないんだよなぁ。


もちろん、父もズバ抜いている
感覚の持ち主ではあるんだけれど。


父だから、末っ子がわかったのか。


それとも、父と末っ子だけにある、
つながりのようなものがあるのか。


末っ子は、この時のことを覚えていない。
ふたりの兄が、話してくれてはじめて知る。


ふたりの兄は、時々、
この時のことを話してくれるのだけれど、


たぶん、楽しかったんだろうなぁ。


この時のことを話している
ふたりの兄の顔が、とってもうれしそうだから。


この話を聞くと、いつも面白おかしくて、
末っ子は、つい笑ってしまうのだけれど、


末っ子は、とってもやさしいふたりの兄に
恵まれていることに、


ふたりの兄へのありがとうの気持ちと、
ふたりの兄とのほほ笑ましい思い出で、
心がいっぱいになるのでした。

タイトルとURLをコピーしました